冬虫夏草を購入する場合には注意したいポイントがあります。その中のひとつが偽物や粗悪品。この記事では、冬虫夏草の定義や、偽物や粗悪品が出回るようになった経緯などについてまとめました。
冬虫夏草は古くから薬膳料理や漢方薬の原料として用いられてきた食材です。希少性が高い上に需要が多く、その影響で価格が高騰したことから似た形のもので偽物を作るといったケースがあり、購入する際には注意が必要な状況となっています。
もし冬虫夏草を購入する場合には、偽物ではないか、また摂取しても体に影響がないかを確認することが大切です。
「冬虫夏草」とは、中国の薬膳料理や漢方薬などに使用されているキノコで、かつては秦の始皇帝や楊貴妃も愛用していたといわれています。
子囊菌類と呼ばれているキノコの一種であり、冬の間に昆虫の体に寄生して夏に宿主の殻を突き破って子実体が生えてくるという特徴がありますが、菌の種類などには厳密に定義されているわけでなく、冬虫夏草には500種類以上があります。
このように、「冬は虫の形をしており、夏には草に姿を変える」という特徴から、冬虫夏草という名前がついたとされています。
実は、中国と日本では冬虫夏草の定義が異なります。
中国の場合には、オオコウモリガを宿主とした「オフィオコルディセプス・シネンシス」と呼ばれるキノコのみを冬虫夏草と読んでいます(それ以外は「虫草」と呼ばれています)。
一方、日本では例えばガに寄生する「サナギタケ」やセミに寄生する「セミタケ」なども冬虫夏草と呼んでいます。このように、中国と比較すると日本の方が幅広く定義されているようです。
冒頭でもご紹介しましたが、近年冬虫夏草の偽物が出回っているのには、このような定義の曖昧さなどを逆手にとっているという部分もあるとされています。そのため、購入したいと考えている場合には、まず「本当に冬虫夏草なのか」という部分を十分に確認する必要があるでしょう。
冬虫夏草の偽物が販売されるようになってしまったのには、下記のような理由があるとされています。
冬虫夏草は、近年プロアスリートが愛用しているということから急激に人気が高まりました。そのため、チベット産の冬虫夏草は価格が高騰しています。このような人気の高まりを悪用した悪徳業者が偽物や粗悪品を取り扱うようになり、市場に出回るようになってしまったという経緯があります。
このような形で出回っている偽物や粗悪品として一般的なものは、昆虫の幼虫やサナギにキノコの菌糸を注射することによって人工的に冬虫夏草を発生させたものが知られています。そのほかにも、そもそもキノコですらなく、単に粉末に色をつけたものといったものが出回っていることもあるようです。また、偽物に水銀を注入することによって重量をごまかしているといった、危険な事例も報告されています。
中国の冬虫夏草の産地は、標高3500〜5000mのチベット族が暮らす高山地帯です。そのため冬虫夏草はもともと採取が難しい貴重品でした。そこに冬虫夏草の人気が急激に上がることによって乱獲が起きてしまい、中国本土の収穫量が減少し、天然の冬虫夏草はさらに希少なものとなり国外への持ち出しが禁止されました。
このような経緯から、偽物や粗悪品が出回るようになったといわれています。
偽物が出回っていると聞くと、どうやって本物を選べばいいのか、と考えることでしょう。しかし、冬虫夏草は香りや味を楽しむようなものではないことから実際に偽物を見極めることは難しいといえます。また、粉末などに加工されていると、より見極めるのが難しいため、できる限り製造過程が明らかになっている商品を選択するのがおすすめです。
また、日本国内産の冬虫夏草を利用するのもひとつの手です。冬虫夏草は国内にも生息していること、また人工栽培も行われていることから、偽物や粗悪品を選んでしまうリスクも少なくなるといえるでしょう。