がんの発症要因が研究によって明らかになってきています。その1つが飲酒です。ここでは、飲酒によって引き起こされるがんにはどのようなものがあるのか、飲酒とがんがどのように関連しているのかを解説するとともに、適切な飲酒量、どのくらい節酒すれば良いのかについても紹介していきます。
WHO(世界保健機関)により、以下のがんが飲酒関連がんであると評価されています。
アルコールに含まれるエタノールが体内に取り込まれると、アルコール脱水素酵素によってアセトアルデヒドに代謝されます。このアセトアルデヒドに発がん性があるため、口腔や咽頭、食道の発がんリスクを特に高めてしまうのです。
また、アセトアルデヒドはアセトアルデヒド脱水素酵素によって酢酸に代わります。アセトアルデヒド脱水素酵素の活性が弱いと、分解が遅いためにより発がんリスクが高くなってしまいます。日本人のおよそ40%の人がアセトアルデヒド脱水素酵素の働きが弱い非活性、または低活性と言われており、アセトアルデヒドが蓄積しやすい体質であることから飲酒関連がんの発症リスクが高いと考えられます。
アルコールによる発がんリスクは、1日2合以上の摂取で40%、3合以上で60%高くなるとされています。
また、各がんのアルコールによる影響についても研究が行われています。
アルコールの影響 | |
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乳がん | ビール250ml(エタノール10g)増加するごとに 7.1%リスクが高まる |
大腸がん | エタノール換算50gで1.4倍リスクが高まる |
食道がん | 日本酒1日1合~2合で2.6倍 2合以上で4.6倍リスクが高まる |
参照元:e-ヘルスネット|アルコールと癌(がん) (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-01-008.html)
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター社会と健康研究センター|飲酒と食道がんの発生率と関係について (https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/338.html)
飲酒と喫煙は、それぞれが食道がんリスクの原因となりますが、喫煙者が飲酒をすることで交互作用によってさらにがん発生率が高まることが分かっています。16万人を超える日本人男性を対象とした研究では、飲酒と喫煙の組み合わせによる食道がんリスクについて下記の通り報告されています。
食道がんリスク | |
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飲酒・喫煙しない | 1倍 |
飲酒者 | 2.76倍 |
喫煙者 | 2.77倍 |
飲酒も喫煙もする | 8.32倍 |
飲酒量と喫煙量によっても、リスクが変わります。
食道がんリスク | |
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飲酒(エタノール23g以下) 喫煙しない |
1倍 |
飲酒46g以上 喫煙40パック超/年 |
16.8倍 |
このように、飲酒と喫煙によって食道がんのリスクが最大16.8倍になると示されたのです。また、研究では飲酒と喫煙どちらかを止めることによって発がんリスクが大きく減ることも分かっています。
食道がん予防効果 | |
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飲酒・喫煙両方止めた場合 | 食道がんの約8割を予防 |
飲酒のみ止めた場合 | 食道がんの約6割を予防 |
喫煙のみ止めた場合 | 食道がんの約6割を予防 |
飲酒と喫煙の相互作用をしっかり認識し、禁酒・節酒する、たばこを止めることを選択肢としながら、がん予防について考えましょう。
参照元:一般社団日本生活習慣病予防協会|お酒とタバコは「食道がん」リスクを高め合う 両方あるとリスクは17倍に上昇 片方を止めただけでも予防効果が (http://www.seikatsusyukanbyo.com/calendar/2020/010236.php#:~:text=%E9%A3%B2%E9%85%92%E3%83%BB%E5%96%AB%E7%85%99%E3%81%AE%E7%B5%84%E3%81%BF%E5%90%88%E3%82%8F%E3%81%9B%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E7%A4%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%80%82)
では、どのくらいのアルコールであれば摂取しても大丈夫なのでしょうか。「科学的根拠に基づいた『日本人のためのがん予防法』」では、飲酒量の目安について1日あたりエタノール量換算で23g程度とし、以下のように示しています。
摂取量目安 | |
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日本酒 | 1合 |
ビール大瓶 | 1本 |
焼酎・泡盛 | 原液で1合の2/3 |
ウィスキー・ブランデー | ダブル1杯 |
ワイン | ボトル1/3程度 |
参照元:がん情報サービス|科学的根拠に基づくがん予防(https://ganjoho.jp/public/pre_scr/cause_prevention/evidence_based.html)
ただし、1日ワイン1杯程度のアルコール摂取でも、10年間続けてしまうとがん罹患リスクが5%上がるとの研究結果も出ています。
参照元:日本経済新聞|少量の酒でもがんリスク 東大などのチーム発表 (https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53431350W9A211C1CR8000/#:~:text=1%E6%97%A5%E3%83%AF%E3%82%A4%E3%83%B31%E6%9D%AF,%E6%80%A7%E3%81%8C%E9%AB%98%E3%81%BE%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B%E3%80%82)
飲酒するときは、アルコールのリスクを自覚し、節酒を心がけるようにしましょう。