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術後内分泌療法(ホルモン療法)

手術後のがん再発予防のひとつに、術後内分泌療法(ホルモン療法)があります。ここでは、術後内分泌療法(ホルモン療法)について、まとめました。

尚、この記事は、以下の情報を元に記述しています。

参照元:乳がん.jp|再発予防のための術後ホルモン療法 (https://www.nyugan.jp/er-positive/post-ope/drug/hormone-therapy/)

参照元:患者さんのための乳癌診療ガイドライン2019年版|Q52.ホルモン療法(内分泌療法)は,どのくらいの期間続けたらよいのでしょうか。(https://jbcs.xsrv.jp/guidline/p2019/guidline/g7/q52/)

術後内分泌療法(ホルモン療法)とは

内分泌療法(ホルモン療法)は、女性ホルモンの作用を低下させて、がん細胞の増殖を抑える治療法です。手術後におこなわれる内分泌療法(ホルモン療法)は、再発を防ぐ目的でおこなわれます。

方法は3種類。錠剤を内服する方法が2種類と、注射で薬剤を体内に注入する方法です。女性ホルモンに作用させるので、適応が限定的なこと、閉経前と閉経後で選択肢が異なることが内分泌療法(ホルモン療法)の大きな特徴と言えるでしょう。

術後内分泌療法が適応となるケース

術後内分泌療法が適応となるのは、乳がんのうち女性ホルモン感受性があるがんです。

乳がんのがん細胞には、2種類あります。「女性ホルモン(エストロゲン)感受性のあるがん細胞」と「女性ホルモン(エストロゲン)感受性のないがん細胞」です。「女性ホルモン(エストロゲン)感受性のあるがん細胞」は、女性ホルモンのエストロゲンを栄養として大きくなる性質を持っているので、「エストロゲンを作らない」あるいは「エストロゲンを取り込まないようにする」といった方法でがんを治療します。術後内分泌療法は、「女性ホルモン(エストロゲン)感受性のないがん細胞」に使っても効果がありません。

手術して取ったがんを調べて、細胞内にエストロゲン受容体(ER)や、プロゲステロン受容体(PgR)のいずれかが一定量以上ある場合に、「女性ホルモン(エストロゲン)感受性のあるがん細胞」と認められ、術後内分泌療法が選択肢に入ってきます。

術後内分泌療法(ホルモン療法)の治療期間

術後内分泌療法の治療期間は、5~10年。長期間の治療が必要です。

がんは5年間が再発のリスクがあると言われていますが、近年の臨床試験や臨床研究で、乳がんには術後5年以上経過しても再発のリスクがあると分かりました。そこで、現在は、術後内分泌療法の治療期間として、10年を推奨する意見が多くなっています。長期間の治療になるため、副作用などのデメリットや病状、再発予防のメリットのバランスによって治療期間を決定することになるでしょう。

術後内分泌療法におけるホルモン療法剤の種類

抗エストロゲン剤

術後内分泌療法に使われるホルモン療法剤のひとつは、抗エストロゲン剤です。錠剤の薬で、毎日内服します。

がん細胞が女性ホルモンのエストロゲンを取り込むのを抑える作用があり、抗エストロゲン剤は、閉経前・閉経後のどちらでも使用できます。

LH-RHアゴニスト製剤

LH-RHアゴニスト製剤も術後内分泌療法に使われるホルモン療法剤のひとつです。注射で薬剤を注入する薬で、女性ホルモン(エストロゲン)の生成を抑える作用があります。卵巣での女性ホルモン製造過程を抑制するという身体機能に作用させる薬のため、閉経前の患者のみに使われる薬です。

LH-RHアゴニスト製剤には、4週に一度、12~13週に一度、または24週に一度と注射の間隔が異なる3つの製剤があります。

アロマターゼ阻害剤

アロマターゼ阻害剤は、毎日内服する錠剤の薬です。体内の細胞で女性ホルモンのエストロゲンがつくられるのを抑える作用があります。卵巣での生成に働きかけるものではないので、閉経後の患者に使用されるのが特徴です。

アロマターゼ阻害剤は、長期間使用すると関節症状や骨粗しょう症の副作用が発生することがあるので、骨密度の低下を抑える薬と併用することもあります。

術後内分泌療法の副作用

術後内分泌療法の主な副作用は、女性ホルモンの抑制による症状で、「ほてり」に代表されるような更年期症状です。命にかかわる副作用は、非常に少ないとされている治療方法です。

副作用は、服薬している期間ずっとあるわけではありません。一般的には、服用後数ヶ月経過すると、症状が軽減します。症状がひどいときは、漢方薬との併用で症状の軽減が可能です。

重篤な副作用としては、ノルバデックスという薬で「子宮内膜異常」が0.2~0.3%の頻度で発生しています。ただし、服薬中は病院で定期的に検査をするので、軽度で発見されることがほとんどです。他には、中性脂肪の増加や血栓症、関節痛、骨粗しょう症のリスクがあります。

閉経前・閉経後でのホルモン療法の違い

閉経前では抗エストロゲン薬とLH-RHアゴニスト製剤の併用

卵巣に作用してエストロゲンの合成を抑えるのが、注射タイプのLH-RHアゴニスト製剤。そして、エストロゲンががん細胞に取り込まれないようブロックする抗エストロゲン薬です。閉経前はこの2つの治療方法を併用することがあります。

LH-RHアゴニスト製剤は、2~5年継続するという考え方と閉経するまで継続するという考え方があり、治療期間に対する見解がまだ定まっていないのが現状です。

閉経後ではアロマターゼ阻害薬もしくは抗エストロゲン薬

閉経後は、脂肪細胞にあるアロマターゼによってエストロゲンが作られます。そのためアロマターゼに作用してエストロゲンを作らせない薬であるアロマターゼ阻害薬が選択肢のひとつです。もうひとつの選択肢は、がん細胞がエストロゲンを取り込まないようにブロックする抗エストロゲン薬。抗エストロゲン薬は、エストロゲン生成過程には働きかけないため、閉経前・後に関わらず使用できる薬です。閉経後の乳がん術後治療で内分泌療法を選択する場合、このどちらかひとつを服用します。臨床試験により併用すると効果が劣るという報告があることから、現在、併用はされていません。

DCIS(非浸潤性乳管がん)のホルモン療法

閉経前・閉経後ともに、選択肢がほぼ一択のケースがあります。それはステージ0の乳がんです。がん細胞が乳管の中だけにとどまっている初期の乳がんで、「非浸潤性乳管がん(DCIS)」といいます。

DCISの場合は、閉経前・閉経後に関わらず抗エストロゲン剤を5年間服用するのみのケースが多いです。

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